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争乱の時-第17話 魍魎の乱(1)

須佐妖戦帖.jpg

 

武角は不思議に思った。「慶喜は何故?武器が揃ったにも関わらず、政権を放棄した?」
須佐之男は「慶喜は死など恐れぬ。恥を恐れる。敗戦して自分の首が江戸で晒しものにされることを」と述べた。
「恥をさらさない一番確実な方法ですか?」
「解らぬ・・・彼の考えは。そんな小さな事に拘ったとは思えぬが・・・・魔は幕府が勝利しようが幕府を潰しにかかるだろう。慶喜は知っていたはずだ。政権を放棄すれば矛先は志士に向き、先ず、薩摩藩を襲う。其の間に自分達は逃げ追うせると思ったか・・・傀儡(かいらい)に甘んじたのか?・・・・・」
「更に其の前に我らを潰せば・・・・」
「魔の天下だ」
「処外国をも巻き込みますか?世界を狙いますか?」
「魔もバカじゃない。世界には他の魔族が星の数ほど棲んでいる。其れに対抗しようなどとは思わぬだろう。・・・・・其れと・・・・もしかしたら・・・・・」
「もしかしたら?」
「いや、まだわたしにも読めない事がある」と須佐之男は口を閉ざした。

 

少し史実に触れておく。

「大政奉還」の発案者が土佐浪人坂本龍馬と云う者だ、と云うことを徳川慶喜は知っていた。

土佐参政後藤象二郎辺りからの情報であろうと思われる。此の事が知れたら暗殺されるであろうと揶揄していたからに違いない。徳川幕府の保護を懇願したのではないか?

 

↑永井玄蕃

慶喜は無論、そんな浪人など知らない、が、功労者であることは間違いない。側近の大目付・永井玄蕃(げんぱく)に聞いた(此の人は勝海舟と並ぶ開明派の幕臣で、龍馬ともぞっこんの仲だった)。「坂本に手を出さぬように」と慶喜は永井に伝えた。「当然だ」永井はそう思った。自分の部屋に戻り御布令を出す準備に取りかかろうと机に着くと、知らせの文が置いてあった。「坂本龍馬暗殺されり」

一足遅かったのである。


「武角!来るぞ」

 

神戸港。
港内の水の底から何やらの咆哮がした。
港内には20隻近い軍艦が停泊していた。各国の大使なども居た。
「何事だ?軍艦の軋(きし)み音か?」

 

水面にボコボコと泡が立ち、水蒸気を発し、大きくなっていった。

「海底火山か?」
「港内にそんなもの、ありはせぬ!」
港で幕臣たちがワイワイと騒ぎだした。

 

ぐわああああああああーーーーーー!!

 

海の仲から怪物が現れた。
「う、うわあああああーー!何だ、あれは?ば、化け物だあああ!!」

 

うおおおおおーーーーんん!!

 

2頭だ。其れはまぎれも無い伝説の鬼だった。大鬼である。身の丈20mはあろう。

「うわああーー、た、大砲だ!大砲を持って来い!」

「酒呑童子と茨木(いばらき)童子だ!」


近くに須佐たちと陰陽師たちが待機していた。
「酒呑童子は大江山では?」
「場所など固定するか!」
「佐助殿、我らも出ますか?」
「まて、勝手に出てはまずい。幕府の様子を視よう」

軍艦から一斉射撃が起きた。


バリバリバリ!!


「砲を構えろ!」「ば、馬鹿な!こんな港内で、それも此の艦が密集している場で撃てるか!」
各国の艦である。もし、他国の艦に命中して沈没などさせたら国際問題である。機銃しか使えない。


バリバリバリ!!バリバリバリ!!「撃て!撃てーーー!!」


しかし、鬼たちは機銃などものともしない。
拳を掲げ、軍艦に叩きのめすと艦はまっ二つになり、沈没した。
「う、うわあああああーー」船員たちが海にこぼれ落ち、逃げ出した。其処を鬼は捉えて・・・・喰った!


「ぎゃああああーーーー」

 

陸地に居た者立ちは、此の光景を視ていた。
「な、なんだ?あの破壊力は?み、視ろ!喰ってる!人を喰ってるぞ!」

 

「我は酒呑童子。知っているだろう?そして茨木童子だ」

 

「しゃ、喋った・・・・・」幕臣たちは只、呆然としている。

 

「我らは人喰い鬼ぞ。一人残らず喰ってやる!」

 

と、云いながらムシャムシャと喰うわ、人間を引き裂いてバラバラにしていた。


「ガトリングガン、アームストロング砲を持って来い!」

早々に用意すると陸地から鬼、目掛けてガトリングガンを構えた。アームストロング砲で数発撃ち放った。
しかし、弾は鬼が平手で叩き、軍艦に当たった。

 

ドカーーーーン!

 

忽ち艦は火達磨である。

鬼はバリアの様なものを前面に張り巡らせると嵐のようなガトリングガンの弾が跳ね返り四方に飛んだ。
其の弾で艦上の船員や海に逃げた船員たちが撃ち殺された。

「ぐ、ぐう・・・・」

英仏米蘭伊普の6カ国公使の側近、数人が此処に居た。彼らは怒り、叫んだ。
「将軍を!将軍を呼びなさい!」
慶喜と6カ国公使が居城する大阪城に早馬が飛んだ。

 

港の土中から餓鬼がモコモコと出て来た。其れに此の世の物で無い生き物も出て来た。顔が悪鬼の如きで胴が蛇の物、一つ目の虎の様な物、などなど。およそ此の世のものでは無いものが数千は出て来た。
空には暗雲が立ちこめ、其の中から鵺(ぬえ)や蝙蝠(こうもり)の化け物、四つ頭の龍、視た事も無い鳥らしき化け物が出て来た。其れ等が一斉に襲いだした。
「百鬼や魍魎共だ!」
あまりの至近距離に砲も使えない。兵たちは槍と刀で対抗したが・・・・。空から頭を千切られる兵、餓鬼に喰われる兵。忽ち陸も血まみれになった。
地上に居る人間は只の餌と化した。

 

神戸港に大鳥圭介が居た。なんとか物の怪を振り払い、斬り捨て戦っていた。
「む、無理だ。此のままでは皆殺しだ。民を、民を逃がせ!至急だ!誰か!行け!」
神戸の民達は既に逃げ出していた。
「勝海舟め。神戸の土地が値上がりするからと云うから買い占めれば、なんてこった!化け物の土地じゃねえか!逃げろ!皆、逃げろーーー!幕府なんぞ、糞食らえだ!」

 

大鳥は天を仰いだ。
「須佐殿、助けてくれ。我々では無理だ。力を貸してくれ」

 

大阪城で慶喜は其の惨状を聞いた。
「おのれ!若日子!化けの皮を剥ぎおった!」
各国公使たちは「閣下、何を云っているのですか?神戸に魔物の襲来?馬鹿なことを云わないでください。其れは何か、我々に対する交渉の作戦ですか?」
「本当だ!今、神戸港が襲われている。あなた方の艦を破壊しているそうだ。素志て陸地も数千の魍魎が人を襲っている。儂(わし)は行くぞ!」
「待ってください。ビジネスが先でしょう。そんな与太話に我々は騙されませんよ」
「違う!本当だ。港が、神戸が壊滅されている」
「逃げる気ですか?」
「違う!皆殺しになるんだ」
結局、慶喜は大阪城に足止めをくらった。

 

「須佐殿、須佐殿、わたしの声が聞こえるか?聞こえたら聞いてくれ。頼む。神戸を、神戸を救ってくれ」
其の悲痛な声を佐助たちは聞いた。
「おい、聞こえたか?慶喜公だ。大阪城からの声が聞こえた。時は来た」
佐助が指声を吹いた。

 

ピーーーーーーーーーーッ。


すると待っていたかのように、空には白狐群数千と大八咫烏がジェット機のような早さで飛んで来た。
海から大猿田彦神と大牛鬼数体が現れた。

須佐たちは背中からヒイイロカネの刀を出し、手にはヒイイロカネの手裏剣を持った。うっすらと燃えている。陰陽師たちの手の中には煌煌と光る炎玉が燃え盛っていた。
佐助が大表てに立つと叫んだ。


「全軍、突撃ーーーー!魔物共を全滅させろ!」


決戦の火ぶたが放たれた。

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