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あ や し い 書 簡 箋

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岩手の朧(おぼろ) 第十二話-岩手の朧 最終
 

「隊長、許可が下りました。ダムの職員たちを避難させたら破壊しろと」
「よし、維持費で無駄な税金を喰いものにして来たダムだ。政治家さんも躊躇(ためら)わんな。皆さん!高い場所に避難してください」

15分ほどで自衛隊機が頭上を翳(かす)めて行った。
「行け!粉々に砕け!」
ダムに向かってミサイルを数発発射した。

ぐわーーーーん!どどどどどおおん!

ダムが破壊され、水と土砂が猛スピードで襲って来た。

ぐわあああああ!!!どどどどどど!!

木を、山を、もなぎ倒す勢いだ。
素志て鬼の居る処に向かって来た。

ぎゃわああああああーーーーー!!
ぐわあああああ!!!

鬼達は霧状になって逃げたが溶岩流は白い煙をもくもくと立ち上がり、冷やされ固まっていった。

ごうううううおおおおおお。

「視てください。煙の周りを霧上のモノが飛び回っている。明らかに動揺している」百目野が云った。
「しかし百目野さん、奴らには効きませんね」
「無理ですよ。鬼を粉砕するための工作では無いですから。奴らはネットワークから水を浴びせられることには感付いていた筈。だけど彼らもどうしようもない。住処を破壊することが目的です」

暫くすると黒く固まった溶岩が辺りを囲んだ。
「百目野さん、奴らは?奴らは何処に行った?」
「此の地を捨てて逃げたんです。三石伝説の様にね」
「何処へ?」
「解りません。解りませんがペグマタイトのある場所でしょう」
「全国には何カ所か大きなものがあります」
「其処に逃げたのか?あるいは知られていない場所かもしれません、何にしても盛岡の伝説の様に、此処にはダムがあったことが幸いしました」
隊長が大きな声で生存者たちに云った。
「皆さん!歩いて下山します。麓で自衛隊がヘリで救援に来る。なんとか頑張ってください」
「命が助かっただけが幸いだわ」村人たちが口々に囁いた。
三石は火山爆発の際、飛来したらしいと伝わっているが、もしかしたら土石流に流されて来たものかもしれない。此の大きな石が何かの象徴の様に思ったのではないか?


百目野たちは辺りの人影を見渡した。
「内田の奥さん!」体中、真っ黒になった内田未亡人が居た。
「百目野さん、ありがとう、自衛隊の方々にも何と云えば・・・」

「内田さん、落ち着いたら今回の事件のことを聞きたい」木藤が脇から云った。
「わたしたちは愚か者です。宝石に・・・お金儲けに眼が眩(くら)んで・・・」
井川が聞いた。「奥さん、あなた方村人たちは、ペグマタイトの宝石で大儲け出来ると本気で思っていたんですか?」
「村人たち?」木藤と山城が聞き返した。
「そうです。あの辺鄙な村には似合わないあなた方の豪勢な暮らし。銀行から多額の借金でしょう?其の金を村人にも与えた」
「其れは主人が、此の村をなんとかしたいと云う願いから・・・」
井川は畳み掛けた。「不正を承知で役所も話に乗った・・・機材の手配から協力までして。まともにやったのでは儲からない、だから怪しげな宝石商に頼んだ」
「鬼たちは・・・知っていたんだ。関わった人間の一番目から順に殺していった・・・。鬼来神社の神主伊藤さんと地質学の見地から井川博士の2人だけが止めていた」

山を降りながら百目野が推測の意見を垂れた。「奴らは住処を荒らすから殺したんでしょう。身を守るためです」
「荒ぶる神は畏怖を持って祀られる。三石伝説の石には注連縄(しめなわ)がしてあります。神として祀ってある。羅刹鬼(らせつき)は去ったのでは無い。今も残ると云う手形は、また何時か来る・・・と云う印だ。恐れと共に強さを祀っているはずです。隊長、こんな大事になって自衛隊は報告をどうしますか?」
「解らない・・・思うに上が誤摩化すでしょう。我々は写真も撮った。証拠は幾らでもありますがね」
「全国にこんなものが地中に棲んでいる・・・何時(いつ)襲ってくるかもしれない・・・なんて云えないと・・・」
「水攻めなど運が善かっただけだ。奴らには手を出さないのが懸命です」
「何者でしょう?」
物理学者の佐伯(さいき)が答えた。
「古生物?異種生命体?原子レベルの?隕石に乗って遣って来た宇宙生命体?五次元生命体?どれとも云えるし、どれとも云えない。確かなのは存在していると云うことです」
「手を出さないのが懸命・・・と云うのは解りますが、知らずに住処を荒らしてしまうかもしれない。また何処かで事件が起きるんでは?」
皆が沈黙した。

岩.jpg

「百目野さん、あなたを疑っていた」木藤が恥ずかしそうに云った。
「疑がわれるのは当たり前です」
「いや、しかし、何故?あなたを此処に呼んだと思う?」
「鬼が出たって云う連絡だったからでしょう?」
「いや、そうじゃない。陰で動いている警視が誰だか解ったんだ」
「え?どなたなんですか?」
「前田警視正と云う人だ」
「まえだ?」
「前田警視正から電話を貰ったんだ」
「はい?」
「あなたは明治の頃、此処で刑事をなさっていた木藤さんのご子孫?ってね」
「あ!前田!」
「そうだよ。俺のご先祖と同僚、相棒だった前田刑事のご子孫なんだ。あんた、柳田教授の本を読んでいるんだろ?なら知ってるわな」
「何と云う!木藤さんも前田さんも共に警察職員・・・・」
「不思議なものだよ。代々警察でも無いのにな」

「百目野さん、あなたの科の学生は幾人ほどですか?」井川と佐伯が顔を見合わせて云った。
「正式では無いんです。将来性がある訳でもないですから。小泉教授のおかげで保ってる様なものです。授業も夜学みたいなもの。趣味で集まっているのが数人の学生です。赤字学科です」
「わたしたちも少しお手伝い出来ればと思っています」
「本当ですか?!ありがたいです。小泉さんが喜びます」

柳田先生、あなたが打ち立てた偉業が21世紀になってやっと形が視得て来ました。わたしが跡を継ぎますよ。


富山県で新JR線の計画が上った。山間のトンネル工事が始まって固い岩盤に当たった。
「此の岩盤だな。調査で解っていたのは。何、大丈夫だ」
岩の切れ目から何やら霧の様なものが出ていた。
「湯気か?温泉でも出るかな?ははっは」
其の湯気はみるみると人形(ひとがた)になった。
「な、何だ?・・・・う、うわあああああああーーーーーー!」

マドのサンサはデデレコデン ハレのサンサもデデレコデン

こきりこ節 富山県民謡
| 21:29 | 阿夜訶志探偵・百目野尊 | - | trackbacks(0) |
岩手の朧(おぼろ) 第十一話-三石神
 

自衛隊が総攻撃を開始しょうとしていた。
「皆さん、此処に居ては邪魔になります。自衛隊本部、避難所ですが一旦、其処に逃げます」ヘリのパイロットがそう云い迂回した。
ミサイルを積んだ自衛隊機数機とすれ違った。
「ミサイル攻撃では駄目ですよ」百目野がそう云うと、木藤が「何を云うんだ!」と叫んだ。
「百目野さん、確かにあんたの云う通りだった。すまなかった。まさかこんな・・・・しかし、自衛隊だって必死だ」
「木藤刑事善いんです。だから奴は攻撃すれば霧化するでしょう。ミサイルなどすり抜けますよ」
「何故、そんなことが出来る?」
「多分、原子レベルの生物なんでしょう。その集合体とでも云うか・・・」佐伯も困っていた。
百目野は考えている。「火力の最新兵器など役に立たない。何か勘違いしている・・・」

ドーーーン!ドドーーーン!

ミサイル攻撃が始まった。
ヘリは一目散に自衛隊本部に飛んだ。

本部では百目野たちのことは連絡が入っていた。到着すると数人が出迎えてくれ、急あしらえのテントに村民たちが避難して居た。
「私が隊長の緒方です。東京からご苦労様です」
「井川博士が居る!」百目野と佐伯が見付けた。
「やあ、佐伯さん、よく来てくれました」井川は満面の笑顔だが服も顔を真っ黒だ。
「百目野さん、本当に本庁の方達と一緒に来ましたね」
「井川博士、ご無事で何よりです。私は結局何も出来ませんでした。しかし、急遽、村が壊滅したと。木藤刑事がわたしを呼んでくれたんです」
「東京本庁の木藤と大城、鑑識の佐藤です」
「刑事さん、事件どころではなくなりました」井川は申し訳なさそうに云った。
「何を云います。途轍も無い事件です。想像を絶する、しかし、我々の仕事は見定めることしか出来ない・・・」
「わたしは奴らが実態化した時、全てを悟りました。こんな奴らが古代から伝説の中で此処の地中に居たのか?と」
「伝説はとても重要です。神話でも其の話になる何かがあった・・・と云うことです」百目野の持論だ。
「ん?伝説・・・・・・・」百目野の頭の中をよぎった。

隊長の緒方に連絡が入った。
「駄目です・・・何も効かない・・・ミサイルを撃つと霧化してしまう。溶岩の中で爆発して更に被害が広がってしまった。攻撃機は退却します」
「待ってください!戻さないで!」百目野が隊長を静止した。
「何か方法がありますか?」

「井川博士、三石(みついし)伝説です」
「三石(みついし)伝説?羅刹鬼(らせつき)の?さんさの起こり・・・」


盛岡市三ツ割・東顕寺(とうけんじ)に注連縄が捲かれた三つの大石がある。
其の昔、岩手山が噴火した折、飛来した石とされ、「三石(みついし)様」と呼ばれ、民達は祀った。
其の頃、羅刹鬼(らせつき)と云う鬼が里人などに悪事をするので、三石様に「どうか悪い鬼を懲らしめて下さい」と、祈願した。
三石神は羅刹鬼を石に縛り付けた。観念した羅刹鬼は許しを乞うので、「悪事はもうしないと云う印を視せなさい」と三石神が宣(のたま)い、羅刹鬼は三石に手形を付けて南昌山方向の彼方へ逃げ去った。
其処から此の土地を「岩手」と呼ばれるようになった。
鬼が「再び来ない」と誓ったので「不来方(こずかた)」と呼ぶ様になった・・・とも伝承されている。
民達は幾日も踊り、神に感謝した。三石様の周りを「さんささんさ」と踊ったのが "さんさ踊り" の起源だと云われる。 三石は元々1つの大岩で、何時頃か3つに割れたとも云われる。
ーーーー岩手三石伝承

「三石神は羅刹鬼を懲らしめたんでしょう?石に縛り付けた?そうじゃない。土石流ではないか?と」
「あ!あの村の山上には大きな沼があったと文献には残っています」
「其の昔は土石流が起こりやすかったんでしょうね。其れで今はダムになっている」
「そうです。現代では意味の無い公共事業ですよ。水を貯めるだけで用途も無い。山上の村まで潰して広げたと云います」
「鬼来神社の祝詞(のりと)は封印では無いんです。あの歌の内容です」

○さんさ踊らば ヤーイ鬼をば蹴飛ばせ 散々(さんざ)暴れて 嫁を喰う

○盆の満月にゃ さんさ様待ち 来るぞ丸月にゃ 今夜ばかり

○踊り去れ去れ 壱所守れや 祝詞広げろ 太鼓打て

「満月の月夜に土石流があったんですよ。素志て奴らは退散した。誰かが起こしたのかもしれない」
「土石流など、奴らには何でもないでしょ?」
「土石流のパワーじゃない!水です。鬼をば蹴飛ばせ。水です」
「水!そうか!其の昔も溶岩で暴れたんだ。水で冷やされれば只の石になる」
「彼らは美しいものを知っている。ペグマタイトの鉱物がそうです。だから住処にしていたんです」
「溶岩石になったら真っ黒なだけだ」
「そうです。だから鬼来神社の鳥居にしていた。汚いものをわざと住処の上に示したんです」

ドドーーーーン!

「何だ?!」本部の自衛隊員、避難民たち全員が眼を見張った。

がおおおおーーーーーーん!

本部中央に土中の裂け目が出来、鬼が出現した。

「奴の仲間が来た!話を聞いてたんだ。」
「なんと云う知恵ものだ。あれがペグマタイト・ネットワークか?」
「逃げろ!逃げろーーーー!退避!退避!」

きゃあーーーー!うわあああああーーーー!

パン!パン!

木藤と大城は逃げながら鬼に拳銃を撃った。
「木藤刑事、大城刑事!無駄ですよ。早く逃げましょう」百目野は半分呆れていた。
「わかっちゃいるけどさ、習性かな」2人は笑っていた。
「緒方隊長!ダムをミサイル攻撃してください」
「ダムを?!土石流ですか?」
「奴らは水を恐れるんです。ダムの水を浴びせましょう」
「そんなこと云ったって、すぐさま出来る訳がない。上に許可を取って、ダム職員の退去もさせねば」
「早急に!そうしないとまず、岩手が壊滅します」
「まず、岩手?」
「奴らは全国の火山傍の地下に居ます。此処を穫ったらネットワークで全国の仲間に知らせますよ」
「りょ、了解!おい!盛岡駐屯地に連絡を入れろ!応援と爆撃の要請だ。ダムを一個破壊するとな」
「隊長!ダム破壊となったらお偉いさんの許可が要ります」
「機はどうした?」
「基地に帰りました。新たに体制を整えてまた来るそうです」
「よし!古来から生き続けた化け物だと!人間をなめるな!眼にもの視せてやるわ」

次回最終話
| 21:55 | 阿夜訶志探偵・百目野尊 | - | trackbacks(0) |
岩手の朧(おぼろ) 第十話-アインシュタインの宿題
2016年 明けましておめでとうございます。
今年も「あやしい書簡箋」をよろしくお願いいたします。

昨年で完結させるつもりでしたが、出来ませんでした。あしからず。
では、続きをどうぞ。



百目野は警視庁に行った。屋上からヘリで現地に向かうのである。
向かうのは百目野、木藤、大城、鑑識の佐藤、素志て1人の物理学者が呼ばれていた。
「百目野さん、あんたのアドバイスが欲しい」木藤はそう云った。
「物理学者?」
「怪訝(おか)しいかい?物理の先生は?」木藤はニヤっと笑った。
「物理の佐伯(さいき)と云います。百目野さん?よろしく」
「兎に角、現地に向かおう。ヘリの中で話す」
ジェットヘリは飛び立った。

「百目野さん、佐伯教授は科学捜査で協力してくださっている方だ」
「百目野さん、あなたの見解を聞きたい」佐伯はそう云った。
「わたしの推測では未知の生物・・・化け物です。ペグマタイトに棲み、放射線を発し、高体温で溶岩にも負けない。しかも温度を探る。体温は自由に下げたり上げたり出来るのでしょう。素志て普段は霧のような状態で居る。人の思考を読み、誰かが頭の中で考えたモノに変身する」
「事実かどうか?は此れからです。可能性はあると思います」
「わたしの法螺話を信じると?」
「最近の物理学は其れこそSFを地で行ってます。迷信とされたことでも科学で証明出来るかもしれない。ところで何故?人を襲うとお思いですか?」
「村人はやりすぎた。金儲けに走り、彼らの住処を荒らした。其れで怒っているのだと思います」
「何故、そのような仮説を起てました?」
「村の鬼来神社の神主さんが、古代からの伝説やらを調べて其のファイルを貸りたのです。其れだけでは十分では無かったのですが、地元の地質学者の井川博士が色んなヒントをくれたのです」

「井川博士はわたしの友人です、優秀な人です。先日、彼から電話を貰った」
「佐伯教授は井川博士をご存知なのですか・・・」
「はい、わたしも妙に落ち着かなくなって」
「佐伯教授は今回は志願したんだよ」木藤が云った。
「物理が役に立つかもしれない。木藤刑事と大城刑事は半信半疑ですが」
「どう?役に立つと?」百目野は解らない。
「百目野さんの話のような生物は地球上ではあり得ない。しかし、別次元、あるいは古代、宇宙からやって来たモノと考えることも出来る」
「どういうことですか?」
「数億年前は彼処らも溶岩だらけだったでしょう。其の時代に隕石、あるいは彗星が落ちたとしたら、ペグマタイトの鉱物は宇宙からの飛来物とも考えられているんです、一緒に落ちた有機物とも考えられる」
「其の話は解りますが、別次元とは?」
「わたし達の世界は3次元。立方体の世界。では4次元は?」
「相対性宇宙論ですか?基本ぐらいしか解りませんが。例えば宇宙では時間が伸びたり縮んだりする・・・時間は一定では無い・・・其れを4次元と呼ぶんでしたっけ?」
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| 23:21 | 阿夜訶志探偵・百目野尊 | - | trackbacks(0) |
岩手の朧(おぼろ) 第九話-村の壊滅


「小泉先生!わたしです」
「百目野君か?無事か?君が行ってから殺人事件が2件増えたそうだね」
百目野は新幹線の中から大学に電話した。
「はい、容疑者扱いです。大学の講義はどうですか?」
「授業はわたしが君に変わってやってる。心配はいらない。犯人扱いには圧力を掛けておいたから」
「先生、警視正って何方(どなた)なんですか?」
「今は云えない。何時か教えるよ。取り敢えずどうする?」
「大学に戻って神主から借りたファイルを纏めます」
「わたしも協力しよう」

東京に戻った百目野は大学に其の侭赴いた。素志て2日掛けて小泉と纏めた。
「百目野君、君は此の大学の歴史を知っているな?」
「はい、わたしは90年前の柳田副学長に憧れて此処に来ました」
「君は継承者だ。此の大学の闇の部分の」
小泉は何処やらに電話して警視庁にアポを取った。
「百目野君、捜査一課の木藤刑事を訪ねろ」
「木藤・・・・」
「そうだ。彼の数代前のご先祖も本庁刑事をしていた。柳田さんと共に怪奇事件を二度追った。2人が随意だったことなど彼は知らない。明後日の午後、担当刑事のアポを取った。捜査に同行したいと説き吹かせてみなさい」



「探偵の百目野?」
百目野は本庁に出向いた。素志て場面は始めに戻る。
「百目野さん、宝石発掘の奪い合いが発端ではないか?と云う見解がある。関係者がまた2人殺されたそうだな。あんたは殺人の容疑者だと。何故、自由に動いている?其れも警察庁のコネかい?俺達は警視庁の人間だぞ。警察庁と云えども偽証であれば、告訴する。此処へ来るとはたいした度胸だな」
「犯人は此の中に居ます」
素志て神主のファイルを纏めたレポートを視せた。
「検討はしておこう。しかし、信用はしていない。君の身柄も拘束するかもしれない。居場所と連絡方法を聞いておこう」

「無理だ・・・再び村に戻って、あの現場の中を見せてくれなど・・・無理だ」
百目野は諦めた。素志て失意のうちに帰った。
「木藤先輩、百目野って探偵の云うこと信じますか?」
「信じるか!何で結論が鬼になるんだ?・・・しかし、現地の迷信を巻き込んでのオカルト現象と見せ掛けた事件とも取れる。犯人は相当頭の善い奴だ。科学に秀でた者の仕業かもな。百目野からヒントを貰えるかもしれない。大城、3、4日したらあっちへ応援に行くぞ」

其の翌日である。百目野の携帯が鳴った。
「はい、百目野です」
「木藤だ」
「はい」
「百目野さん、あの村が壊滅した」
「え?!何故?何時の事ですか?」
「ほんの30分程前だ。マスコミもまだ動いていない」
「何があったんです」
「地割れで溶岩が吹き出たそうだ。辺りは火の山だ」
「溶岩が?!何故、あんな場所から?村人たちは?」
「数名の死者。殆どは軽傷者だ」
「死者が出たんですか・・・」
「其れで・・災害から逃れた皆が、解せない事を云っている。自衛隊も含めてなんでマスコミを押さえている」
「何と云っているんですか?」
「鬼のせいだ、鬼が暴れたんだ、鬼に喰われたと。溶岩をも操っていたと。自衛隊員まで証言している始末だ」
「鬼が!!!」
「俺達はヘリで現地に向かう。あんたも来てくれ」
百目野は何処かから咆哮(ほうこう)が聞こえた気がした。
| 22:30 | 阿夜訶志探偵・百目野尊 | - | trackbacks(0) |
岩手の朧(おぼろ) 第八話-さんさ
 

「また、お前さんか!」
村の小さな警察署から昨日の刑事が遣って来た。
辺りは肉片と臓物が散々している。
「俺は県警から応援で来てるんだよ。これ以上勘弁してくれ。おい、此処等一帯をシートで隠せ」同行の警官たちに命じた。
「飛田刑事、百目野さんは奴らに眼の仇にされているんですよ」井川博士が横から口を出した。
「飛田刑事、殺された人達はペグマタイト掘削の関係者ですね」百目野が聞いた。
「君には教えられない」
「刑事さん、あなた方は其処は解っているんだ。此の村が其れで恩恵を受けていることを。違法で闇業者に鉱物を高額で売りさばいているのを。だから其処から捜査を始めた。ペグマタイト鉱床を巡っての争いだと思った。けれど、内田家の事件の全容が解らない。井川博士!此れは復讐です。窠(すみか)を砕いた連中への報復ですよ」
井川は云った。「わたしは止めたんです。不当に掘るなと。売るなと。其れに・・・」
「其れに?」
「此の村は岩手山に近いが、火山の影響は対して受けていないんです」
「え?ペグマタイトと云うのは火山活動の成れの果てですよね。溶岩が地中に溜まり、悠寛(ゆっくり)冷えて出来あがった、大結晶の美しい火成岩」
「多少は残っています。江戸時代〜戦後まで陶器材料の長石・ガラス材料の石英を目的に採掘されていたんです。貴重なものなんです。だから江戸の頃には見付かった筈なんです。けれど、何故?今頃見付かった?其の調査が始めだったんです」

「ま、まて。あんたがたは何を勝手に論議している?窠を砕いた連中への報復?誰の事だ?また人が殺されたんだぞ。惨殺だ。惨いものだ」飛田刑事はイライラしている。

「百目野さん、此処のペグマタイトは人工です」
「え?!」
「いえ、ペグマタイトは本物です。だから皆が騒いだ。しかし人工としか思えない。形成年月が怪訝(おか)しい。鉱物が出来るには遥かな時がかかります」
「どれほどですか?」
「古くは白亜紀末から古第三紀の頃から。悠寛と圧縮されて出来上がるんです」
「ペグマタイトは人工で作れるんですか?」
「地中に溜まった溶岩を探して、膨大な重力をコントロール、圧縮技術として応用しながら生成する・・・物理学者は未来人なら作れるかも?って云うでしょう」
「奴らは地中をコントロール出来る?!」

「だから、奴らって誰だ?!」飛田刑事はキレた。
「飛田刑事!此の犯人は地中を動かせるんです。つまり溶岩さえコントロール出来る。地震だって起こせる」百目野は恐ろしいことに気付いた。
「百目野さん、此処の村の謂われ、さんさ・・・はっ!と思い出したんです。富山の、こきりこ節・・・」
「マドのサンサはデデレコデン ハレのサンサもデデレコデン・・・」
「意味は解りませんが富山にもさんさがある」
「井川博士、下手したら日本中にさんさが居るかもしれない」
「た、大変だ!」
「井川博士、わたしは直ぐさま東京に戻ります。本庁の刑事たちに会って説き吹かせます。そして一緒にまた来ます」
「百目野さん、あなたの荷物は預かっておきます」

「まて、こら!百目野!貴様!新たな容疑者だぞ!勝手なことをさせるか!逮捕だ!」
警官たちが銃を構えた。
「かまわん!百目野さん、わたしの車を使ってくれ。車の中に財布がある。使ってください」
井川と加尾は盾になった。
「井川博士!あんた学者ともあろう人が!」飛田刑事は更にキレた。
百目野は博士の車を借り、幹線道路を目指し、盛岡から東京に向かった。


↑愛知県犬山市桃太郎神社の鬼の木乃伊。木乃伊自体は太平洋戦争で焼失し、現在は此の写真のみ。実物は体もあった。身の丈3.6m。手足の指は3本ずつ。


↑大分県宇佐市、宝山大剰院の鬼の木乃伊(ミイラ)。身長2.2m、現地の山人族の神。手足の指は3本。某大学のDNA鑑定の結果、女性だと解った。

(サッコラチョイワヤッセ)
○さんさ鬼見りゃぁ ヤーイ焼ける焼けるよおいよ(サッコラチョイワヤッセ)
  男も女も 恐ろしばかりサンサヨー(サッコラチョイワヤッセ)

○さんさ踊らば ヤーイ鬼をば蹴飛ばせ 散々(さんざ)暴れて 嫁を喰う

○盆の満月にゃ さんさ様待ち 来るぞ丸月にゃ 今夜ばかり

○踊り去れ去れ 壱所守れや 祝詞広げろ 太鼓打て

○朝に起きれば 嫁取る鬼よ 俺をだまして 連れ去るか

○南部片富士 岩手の山よ 巌は妖艶しや いつ出やる

○さんさ踊るなら 盛岡までも 老いも若きも 妻も子も

○踊り踊る奴 馬鹿になって踊れ 着物引き散れ 子を作れ

「さんさ元歌」と書かれてあった伊藤神主が残した資料から。
| 22:57 | 阿夜訶志探偵・百目野尊 | - | trackbacks(0) |
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